商品開発物語 vol.5 ネパリ・バザーロの商品ができるまで

みつろうの天然キャンドル


                   
               女性たちに仕事の機会を創るため9年前にこの仕事を始めたスニタさん。


 ネパールの奥深く、遠い村からやってきた「みつろう」は、カトマンズにあるスニタさんの工房でキャンドルになり、私たちの手元に届きます。小さな工房では、10人くらいのスタッフが働いていて、中には遠い村から仕事を求めて出てきた人や、早朝学校に通ってから、仕事に来ている人もいます。
 スニタさんの工房に届けられたみつろうは、チーズの大きなかたまりのようです。ミツバチが食べたものによって、みつろうの色は違います。一番きれいな黄色をしているのは、マスタードの花の蜜を食べた時だそうです。花が咲かないシーズンは、お砂糖を与えます。その時は、ちょっと黒っぽい色をしています。
 「私たちが服を着替えるように、みつろうも着替えるんだよ」と、スタッフは笑って言います。



10人ほどのスタッフが働いています。


 みつろうを湯せんで溶かすと、とろっとした、おいしそうなはちみつ状になります。それを型に流し込んで15分ほど待ち、型からキャンドルを取り出すと、まるで生まれたてのたまごのようにホカホカしています。ナイフできれいに形を整えて、少し乾かします。そして、最後はみつろうにドライヤーをかけます。すると表面が少し溶けて、つるっとしたきれいなキャンドルが完成します。
 たまごの形をしたキャンドルは、紙で作られた、たまごパックに入って日本に届きます。パッキングしたものを置いていると、知らない人はたまごと間違えてしまうそうです。



 最初に日本に届いた時は、包んだ新聞紙の文字がキャンドルに写っていたり、形がゆがんでいたものもありました。ネパールの生産者に伝えると、どうやったら大切なキャンドルを無事に日本まで届けることができるかと、すぐに皆で相談し、このたまごパックのアイディアを思いついたそうです。次の入荷から早速改善されたものが届き、ネパリ・バザーロの事務所では、驚きとうれしさで歓声があがりました。ネパールの生産者と、キャンドルを通してつながっていることを強く感じた瞬間でした。
 ネパールは電力不足のため、ひどい時は毎日6時間の停電があります。また村に行くと、未だに電気が通っていない地域が少なくありません。そのため、キャンドルは必需品です。毎日使うものなので、ネパールの人は高価なみつろうキャンドルを使うことはほとんどありません。
 「日本の皆さんが気に入って使ってくださることによって、貴重なみつろうを無駄にすることなく、村の養蜂農家も、カトマンズでキャンドルを作っている私たちも、この仕事を続けることができます」とスニタさんは言います。
 明かりを消して、ネパールに想いを馳せながら、キャンドルの灯りを愉しんでみてください。


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