「フェアトレードを通じて世界とつながる」
-----地域から考えて地球規模で行動する取組みについて-----

<はじめに>

 交通、通信の発達とともに、地球は狭くなり、多くの市民が海外にでることも多くなりました。そして、共感、共生といわれるように、豊かな社会作りと地球市民としての行動が求められています。
 その有効な方法の一つとして、フェアトレードの活動を紹介し、地域でどのように取組み、その結果がどのように地球規模の行動に繋がっていくのか、その一部をご紹介し、共に考えていきたいと思います。

<発表概要>
 「フェアトレード」とは、公正貿易とか、もうひとつの貿易とも呼ばれ、欧米では約30年の歴史を持っています。その目的とするところは、世界に広がる貧困の改善です。貿易を通じて仕事を作り、仕事を通じて生活を向上させる、生産者の個々人を尊重した活動です。一方的援助と違い、この貿易の輪に関わる人々は、皆、共存共栄している対等な関係者です。しわよせの生じやすい力のない小さな生産者に配慮しながらすすめられる貿易でもあり、ビジネスという形の継続性を持った社会貢献活動です。
 「ネパリ・バザーロ」は、フェアトレード団体の一つで、オランダで法人登録された国際NGOであるIFAT(International Federation for Alternative Trade)の正式メンバーです。IFATは、ILO(国際労働機関)の正式なオブザーバー資格を持った、世界48ケ国の生産者と輸入を行う143団体が加盟する組織で、事務局はイギリスにあります。このようなネットワークを通じて意見交換や支援をもらいながら、自分たちの活動を深めています。私達の活動の主な対象国はネパールです。40を超える生産者団体と関係を持ち、紙、紅茶、コーヒー、自然素材では、ネパールの各地の村と取引があり、技術支援や設備化、女性グループのネットワーク作り、収入向上に向けた施策、コミュニティー研究などをしながら慎重に取組んでいます。
 「現地の活動」は多様で、一つの小さな団体が、特段の援助もなく貿易というビジネスを通じて一般の企業と競争し、更に社会貢献するのはとても大変なことです。それでも、その存在が可能であるのは、市民の方々から受ける支援やボランティアの活動による応援があるからだと思います。様々な技術や意識を持った方々が関わっています。
比較的豊かな地域は、一般に教育の程度も高いのですが、その中のある地域は、何故か学力が低いということがあります。そこで、ある教育の研究者がその地域に住み、生活を共にしながら調査をしました。その原因は様々あり、教育面だけからでは改善ができません。一般には、一家の生計と大変関係が深い場合が多いようです。そこで、フェアトレードの面からも検討することになります。
「私達の住んでいる地域」では、現地の対象地域研究の論文や周辺の資料を集め、関心あるボランティアの方で分科会をつくり検討します。必要であれば、現地で話合いをすることにしています。このようにして、私達の専門性や関心の程度に基づいて皆で話合い、その効果が海を越えた地球上の他の地域で生かされる可能性があります。一人一人が、概念だけでなく実際の問題として把握し考えて行動できる場が、フェアトレードという活動を通じて、私達の住んでいる地域でも可能になろうとしています。

<話し合いたいこと>
 都心ならいざ知らず、横浜のはずれという地域性では、関わりたいというボランティアさんが多いとは言えません。せっかくの「地域からのかかわり」を活かすには、どうしたら良いのでしょう。 現地で、フェアトレードと教育の連携が必要なように、地域でもそのような連携の必要性を感じています。

<今後の課題>
 10年近い活動を通じて、ようやく「地域から考えて地球規模で行動する」という、地域から現地を線で結ぶ出発点に立てた感じです。その成果はこれからです。このような学際的な活動を盛上げて、活気ある地域社会、地球市民社会に1歩でも近づけられたらと願わずにはいられません。