一般貿易とフェアトレードの違い

--ゲストスピーカー早苗康子さんをお招きして--
編集部

 国際フェアトレード組織IFAT(International Federation for Alternative Trade)が音頭を取って行う世界的行事、国際フェアトレード・デイは、今年で2回目。そのメンバーであるネパリ・バザーロでは、5月18日にセミナーを開き、詳細は、次号33号でご報告します。ゲストスピーカーは、自らフェアトレード事業、「コンシャス・コンシューマー」を運営する早苗康子さん。積極的に選択できる消費者になってもらうための情報誌「かわら版」の創刊者で編集者でもあります。ネパリ・バザーロの目指すフェアトレードは、代表の土屋春代から紹介します。
 9月27日、28日には、関連イベントとして、フェアトレード劇、映画の上映と解説を行い、楽しみながら国際理解を深めるように企画しています。(2003.5.15)

◆消費が社会を変える
 フェアトレードにも様々な取り組みがあります。早苗さんのフェアトレードは、私たち日本人の消費行動が現地に大きく影響する点に注目して活動していることです。「意識の高い消費者=コンシャス・コンシューマー」という名前にその願いが込められています。では、「消費が影響する」の意味は何でしょうか。

◆投機にふりまわされる価格
 コーヒーは天候によって収穫量が大きく左右される作物です。その年によって価格が大きく変動するのを防ぐために、生産国は国際コーヒー協定を結んでいました。しかし、この協定は1989年に事実上崩壊。現在、コーヒーの価格はニューヨークとロンドンの国際取引市場で決まります。ここでは価格変動によるリスクを抑えるために、先物取引というシステムが利用されています。実際に収穫される前に売買の約束をすることです。しかし、投機目的のためにこのシステムを利用する人もおり、かえって価格の乱高下を招いているという指摘があります。ブラジルで霜害のあった1997年には、世界で実際に収穫されたコーヒーの5倍の量が売買され、価格は高騰しました。最近ではアジアやアフリカでの生産増などによって供給過剰気味となり、価格はかつてない安値となっています。2002年の国際市場価格は1ポンド(454g)あたり50セント(約60円)と、生産コストをも下回る低価格で、彼らの生活維持も困難な価格が続いています。貧困が加速する経済のグローバル化の影の側面です。

◆フェアトレード・コーヒーを飲もう!
 市場原理で価格を決定する通常の貿易とは違って、環境や人権に特別に配慮したフェアトレードと呼ばれる貿易があります。実践するのは私たちのようなNGOやそれに関連する会社などです。フェアトレードでコーヒーを輸入する場合は、仲買人や商社を介さずに、小さな農家から直接生豆を買いつけ、一定の買い取り価格を保証します。たとえばFLO(Fair Trade Label Organization: アメリカは、TransFair USAがその支部)では、コーヒー豆1ポンドあたり$1.26の買い入れ価格を農民に保証し、農民が高利貸しに頼らなくてもよいように前払いを行い、長期的な関係を保つという方法で取引しています。また、ほとんどのフェアトレードコーヒーは、農薬を使わない有機農法で栽培されています。これにより、農民の生活を守るだけでなく、地域の自然環境をも守っているのです。
 日本でも、お店や通信販売でフェアトレード・コーヒーを手に入れることができます。1杯のコーヒーを選ぶときにも、汗を流してつくった人びとや自然環境も思いやることが、コーヒーを更においしく飲むコツかもしれません。
◆外国の衣料品メーカーにみた企業姿勢
 一般企業も社会のために存在し、私たちもそのお陰で豊かな生活を享受できています。問題は、地球上にある貧困という問題も広がり、社会不安として後世につけをまわしていることです。具体的には、それはどのようなことなのでしょうか。
 イギリスのメディア、BBCが衣料品メーカーN社とG社のカンボジアの下請け工場に潜入し、そこで働く少女を取材するという内容の放映をしました。
 消費者に向けてより良い労働環境をアピールしていたそのメーカー各社が、実際は過酷な労働を強要し、児童労働も存在していたというものです。親の借金のために工場に入り、月給ではそこの寮費や生活費をまかなうのが精一杯で、いくら働いても借金は減らない、大量生産の大きな工場では、朝から晩まで休みの無い過酷な労働環境でした。その結果として、メディアもその実態を知った学生たちも、労働環境の改善、児童労働の撤廃を求め、不買運動に至るというものです。
 メーカー側がどこまで事前に事実を把握していたかということもありますが、問題=不買運動もとても短絡的で、解雇されるであろうそこで働く女性や子どもたちへの配慮がないのも問題です。何故、メーカーもメディア、学生たちもこのような行動を取るかと言えば、それは生産者が見えていないのでしょう。
 児童労働では、先進国のエゴにより一方的に労働を禁止すると、働けなくなった少女たちはもっと厳しい環境に陥ってしまう危険があります。顔が見えていれば、どうすればベターなのかを一緒になって考えることができます。それは、フェアトレードの精神でもあり、長所でもあります。
◆ネパリ・バザーロのフェアトレード
 従来の貿易では市場を得て利益を享受できない力のない生産者と協力しながら社会の問題を改善していくのがフェアトレードです。
 ネパリのフェアトレードは、現地に何度も足を運び、生産者との人間関係を築いて置かれている状況を掴み、相手の技術、相応しい素材をもとに商品開発をしていきます。小さな組織の生産者とともに仕事をしているので製品開発、新たな素材探し、技術向上、品質管理なども積極的に係わらなければ品質を維持できず市場を失ないます。個々の生産者の技術レベルの見極め、その課題発見と改善がより重要です。環境に優しく継続性を重視し、ハンディクラフトであれば、安全な化学染料、草木染めに切り替えていくこと、農業であれば、有機農産物、無農薬農産物の栽培を実践していくことも大切な仕事です。
 例えば安全な化学染料、草木染めに切り替えようとした時、基盤整備がされていない小さな生産者だと、多くの時間を費やし、膝を突き合わせて彼らの言葉で話し合い、必要によっては異なる団体間での分業の仕組みも作らなければなりません。多品種少量生産のハンディクラフトで、両者の橋渡しをして仕組みづくりを実現するには、手間やエネルギー、精神的な負担など大変な仕事です。布も一度に染めたり織るのに必要な最少量というものがあり、同じ布を他の製品にも流用しなければ布の準備もできません。生産者のコスト負担を減らすには残布の利用法まで考えなければなりません。それだけ難易度が高く、ここまで手をかけないと、一般に出回るような製品が完成しないのが現実です。
 コーヒーであれば、皮むき機を村に設置し、有機証明の試験官を村へ連れて行くなど、栽培から流通、市場創りに加わって初めて商品の安定供給が可能になりました。紅茶では、JAS証明の取得や、新しい製品開発、マサラティーは、有機スパイスの採用などを行い、商品の質を向上させています。その間、政情不安で、農民が誤って軍隊に殺されることを恐れて森に入れず、製品化が遅れたこともありました。奨学金という福祉プログラムも、顔がみえて初めてできることです。
 消費者一人一人の意識がフェアトレードを支え、安全な社会創りに繋がることを期待しています。