学生時代の夢を仕事に
庄子加代
私は、なんともラッキーガールなのだろうと思います。学生時代より国際協力に携わりたいと思い、活動を続けてきましたが、自分が求めているものにはなかなか出会えませんでした。フェアトレードに出会ったときは、「これだ!」っと頭の中で鐘がなりました。そう思ってからは「人生意気に感ず」的な行動でした。幸運にも昨年、大学院を卒業した春からネパリ・バザーロで働くチャンスをもらいました。代表が私に「肝心なのはやる気です」と、まだ社会人としては未熟者の私にチャンスを与えて下さったことは本当に嬉しい限りで、その時はただただ無邪気に喜んでいました。この仕事がいかに責任のある仕事かを感じる前に。
一番初めの仕事は、出荷作業でした。当初の私は、出荷前の検品時に不良を見つけることばかりに気をとられ、その商品に対する理解がとても甘かったのです。手作り品のなかには、一見不良に見えるものが、手作りの風合いであることが多々あります。工業製品ばかりを目にしてきていた私は、そのことを他の人に教わるまでは気づくことができませんでした。また、現地には不良が生まれる背景がそれぞれにあるのですが、そこまでは考えてはいませんでした。私は、ネパールへは行ったことがないため想像するしかないわけですが、それにしてもなんて頭の中のキャンバスが貧相だったのかと、今になって客観的に振り返ると恥ずかしい限りです。
そのキャンバスに一筆一筆、書き足していくことができるのが、現地の具体的なお話を聞いたときです。例えば、どの商品でも、出来上がるまでの興味深い物語りがあるので、その話を聞くと、より深くその商品が理解でき、一層愛情が沸いて来ます。また、メディアを通さない、タイムリーなネパールの真の情報を聞いたとき、いかにネパールの人々の暮らしが大変なものであるかを、頭ではなく心でそれを感じ取ることができます。
ネパールは、中国とインドという大国に挟まれ、更に急斜面だらけで地形的にも生活をするのに大変な労力を強いる場所です。私は、国を人に例えてみました。権力のある人に挟まれて、その圧力を感じながら暮らす立場の弱い人、それがネパールの姿なのではないかと。日本では、ネパールがトレッキングの観光地として有名です。直営店ベルダの店頭に立ったとき、度々お客様から「ネパールは良いところよねー」の一言を聞くことがあります。確かに、ヒマラヤ山脈のすばらしい絶景があり、そこに大国に挟まれながら、伝統的なしきたりに縛られながら暮らしている人々がいるのを忘れがちになるかもしれません。また、反政府的な行動について日本ではほとんど報道されていないため、彼らが多くのネパールの庶民を結果として傷つけていた状況も知る機会がなかなかありませんでした。私もネパリ・バザーロに携わることがなかったら、ネパールへの印象は、「良いところですよねー」で終わっていたかもしれません。真の情報を聞くことは、とても辛い面がありますが、目をそむけてはいけないのだと思います。
反政府的な状況を聞いたときは、地道にやってきたフェアトレード活動が水の泡になるのではないかと単純に考えてしまい、ショックを受けました。確かに、人々の暮らしにその影響はあります。しかし、生産者一人一人の暮らしが仕事を得る前よりも良くなっている状況を聞き、スローな国際協力であるフェアトレードの根強さを更に感じることができました。それと同時に、この仕事の責任の重さをずっしりと感じました。今までは、組織を代表する方々が外部からの強風に立ち向かい、私たちの活動を守ってきました。いつか、そのような強風を直接目の当たりにすることになるのでしょう。精神的に厳しい面が多々あると思いますが、毎日共に働いている仲間達とならば、それを乗り越えて行けると思っています。
毎日顔を合わせている仲間たちは皆個性が豊か過ぎるほどですが、不思議とバランスが取れています。皆がそれぞれの個性を出し、そして飾ることなく、同じ目標に向かって前進している職場で働けることはとても幸運なことです。時には、ぶつかり合いますが、それぞれが成長する絶好のチャンスです。また、曲がったことが嫌いで、すべて敬遠なしのストレート勝負のようなフェアトレードの現場で働くことは、私達個々の生き方にとてもよい刺激を与えていると思います。私達スタッフも、そして生産者も技術だけではなく精神的に成長することができる、それもフェアトレードの特徴であるかと思います。
私は、年末にネパールへ行く予定です。そこで体験したことすべてを吸収し、頭の中のキャンバスに絵の具を明確に塗りつけ、今後の仕事をきっとグレードアップさせることができるだろうと、今から期待で胸が膨らんでいます。